平成15年度講演会


講師   日比野善典氏(NTTフォトニクス研究所グループリーダ)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成16年1月21日(水) 12時40分〜14時10分
場所   群馬大学工学部総合研究棟3階303教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1 )  

参加者は百十五名で、学外からの参加者はいなかった。
 支所長である本学石川教授の司会のもと、NTTフォトニクス研究所グループリ ーダの日比野善典氏 が「光通信 用デバイスの研究開発動向」と題して講演した。
 インターネットの普及に伴い、ネットワークの大容量化が強く望まれている 。現在、ADSLのよう な電気信号に よる情報伝送が主流であるが、一部には、光ファイバを伝送媒体とした光ネッ トワークも一般家庭 に普及し始 め、今後より高速、大容量化が可能な光ファイバによる光通信が主流になって ゆくものと思われ る。光ファイバ を用いた光通信は1980年代に始まり、当初は信号の変調速度を上げて時分割多 重(TDM)で容量を拡 大した。今 では2.5Gbit/sから10Gbit/sが主流となりつつあり。40Gbit/sも実用化されよう としている。また、 1995年頃に は波長多重(WDM)が導入されるようになった。WDMでは異なる波長の光信号を 合分波フィルタを用 いて1本の光 ファイバで伝送し、波長多重分だけ伝送容量の拡大を可能とする。現在、研究 レベルでは、WDMと TDMの両者の適 用により1本のファイバで10Tbit/s以上の信号を伝送することができるようにな ってきた。
 講演では、光ファイバを用いてネットワークを組み、WDMを行う際に必要とな る合分波デバイスや 光スイッチ といった光デバイスについて説明があった。光デバイスの形態としては、バル ク型、光ファイバ 型、平面導波路 型、MEMS型等があるが、今回の講演では石英系平面型光波回路(PLC)型デ バイスの開発につい ての説明が 中心であった。PLC型は光ファイバとの接続特性に優れ、高信頼、かつ高機能で あるため、光ネット ワークの キーデバイスとなっている。1本のファイバで送られてきた波長多重化された 信号を32チャンネ ル、400 チャンネルに分ける分波デバイス等が紹介されたが、光ネットワークの普及が 思ったほど速くな く、400チャ ンネルの物は苦労して開発したが、実用化のメドは立っていないといった裏話 もあった。NTTの研究 所で行われ ている最先端の研究について伺うことができ、大変有意義な講演会であった。









演題   液晶ディスプレイ開発に携わって
講師   佐藤 彰 氏(セイコーエプソン株式会社 ディスプレイ事業部 製品開発部 部長)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成15年12月2日(火)12時40分〜14時10分
場所   群馬大学工学部総合研究棟5階506教室

参加者は40名で,その内訳は学外から1名,教職員8名,学生31名であった。
  講演内容は,@液晶とは,A開発業務の実際,B求められる技術者像の3部構成であった。まず液 晶について分かりやすく説明された。液晶表示デバイスの歴史は,液晶材料の発見以降現在に至る まで一世紀を越え,欧州で液晶材料が発見され,米国で液晶ディスプレイの研究開発が進展し, 日本が量産化に成功した。エレクトロニクスにおける液晶表示デバイスの大きな特徴は低電圧駆動が 可能なことであるが,日本が量産化に成功したのは半導体技術に代表される様々な要素技術の進展 によるところが大きい。また,今後の改良点は視野角であるという説明があった。次の開発業務に 関しては,統計的手法が重要であることが強調され,最後の求められる技術者像で,nice communicater, nice reformer, nice organizerの説明があった。
 講師の佐藤氏は群馬大学工学部(旧)合成化学科の卒業生で,学生にとって,活躍する先輩の話 を聞くことが出来,大変有意義な講演会であった。




講師   大嶋 洋一 氏(特許庁特許審査第三部半導体機器 審査官)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成15年12月11日(木) 16時00分〜17時30分
場所   群馬大学工学部総合研究棟3階301教室

 参加者は13名で,学外からは東京測器研究所4名,(株)ミツバ1名,ナレッジテクノロジラボ1名, 教職員4名,学生3名であった。
 特許をはじめとする知的財産権に対する重要性が認知されつつあるが,研究者・技術者にとって 特許制度啓蒙の機会は十分ではなく,未だに縁遠い存在あるいはやっかいな存在であるという心象 を持っているエンジニアも多い。この講演では,研究者・技術者にとって,自らの研究成果を特許化 することの本質的な意味を理解するため,そして特許制度の法的権利の側面,技術情報の側面等を中心に, 多面的な特許制度活用の仕方が紹介された。特に,特許申請書を書く一歩手前の発明提案書の作成のために, ウエッブスターが開発した「発明提案書作成ツール」が配布され,それを用いて説明された。
 難しいと考えていた特許を少し身近に感じることが出来,大変有意義な講演会であった。





講師  小島政邦氏(サンデン(株)技術本部技術開発センター)
主催  電気学会東京支部群馬支所
日時  平成15年9月5日(金)
  場所   場所 サンデン株式会社赤城事業所(群馬県勢多郡粕川村中之沢7)

参加者は25名(電気学会会員はミツバ,日本サーボ,北爪電気事務所各1名,前橋工科大学2名 の計5名,学生12名,教職員8名)であった。 電気学会東京支部群馬支所では9月5日(金)にサンデン株式会社赤城事業所の見学会と同時に講演会を開催した。見学会に先立ち,「サンデン製品における電子制御機器技術」と題して,サンデン(株)技術本部技術開発センターの小島政邦氏が講演した。まず,電子制御装置開発事例として,自動販売機を対象とし,製品仕様決定,回路設計,基板設計・基板試作,ソフト開発,単品評価試験,実機評価試験の順で行われる開発の流れを3.3V,RISCマイコンを用いたファジー制御を例として説明された。次に,自販機ネットワークシステム開発事例として,サンデンのオンラインネットワークシステムのDo-Linkや,非接触ICカードを応用したEdy対応自販機システムが説明された。Edyシステムは赤城事業所で実際に身分証明書,駐車場のゲート開閉,タイムカード,食堂やコンビニで使用されている。  講演は30分程度と短かったが,サンデン(株)で実際に行われている電子制御機器技術の開発を 勉強することが出来,有意義な講演会であった。




講師   伊藤文武 氏(群馬大学名誉教授)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成15年6月30日(月) 10時20分〜11時50分
場所   群馬大学工学部総合研究棟4階402教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)

 参加者は百三名で、学外からの参加者はいなかった。
 支所長である本学石川教授の挨拶の後、群馬大学名誉教授の伊藤文武氏が「磁気と冷凍に関する最近の話題」 と題して講演した。
 まず、低温発生の基本原理として、カルノー、逆スターリング、エリクソンサイクルについて説明があり、 こ れらのサイクルを使った冷凍機について説明があった。これらのサイクルでは、フロンやアンモニアの 気体が圧 縮・膨張することで対象物から熱を奪うが、この過程での損失が冷凍機としての性能を決めている。 これらのサ イクルを使わない方法として、パルス管冷凍機の説明があった。この方式はコンプレッサのよう な機械駆動部が ない分、効率が良いが、磁気冷凍ではさらに高効率が期待できる。磁気冷凍の原理は、磁性体 に磁界をかけてい くと磁性体が発熱し、磁界を取り去ると温度が下がる現象(磁気熱量効果)を利用する。 磁性体が冷えるのは、 外部の磁界により磁性体中の磁化の向きが揃っている状態から磁界を弱くする(ゼロに する)と、磁化の向きが バラバラとなり磁気エントロピーが増加する。この時、磁性体の周りから熱を奪 うため、冷凍が可能となる。
 磁気冷凍には、フロンや代替フロンの替わりに磁性体の磁界変化による温度変化を利用するため、環境にや さ しい。気体冷凍技術では、気体を圧縮・膨張する際、損失が発生するが、磁気冷凍技術では、固体である 磁性体 に磁界変化を与えることで一様かつ瞬時に温度変化が得られるため、理想的な冷凍サイクルに近く、 エネルギー 変換効率が高い。コンプレッサは不要であり、動力は熱交換媒体の循環と磁性体の移動に必要な だけであり、省 エネルギーを図ることができる等の特徴がある。このように優れた磁気冷凍ではあるが、1 回の磁界変化で生じ る磁性体の温度変化が小さいため、繰り返し磁界変化を与える必要があるなどの問題点 もあり、実際の冷凍機は 現在開発段階にあり、次世代の冷凍機であると言われている。このような最先端の 話題が提供された、大変有意 義な講演会であった。




これまでの活動を紹介 <講演会>のページに戻る