平成26年度講演会



演題   産業利用向けイオン源の開発
講師   高橋 伸明 氏
      (住友重機械工業株式会社 技術研究所 物理応用グループ
       量子技術チーム 技師)
日時   平成26年12月15日(木)14時20分〜15時50分
場所   群馬大学理工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催   電気学会東京支部群馬支所

参加者は58名(内,学生54名,外部0名,教職員4名)であった。
産業利用向けイオン源の開発というタイトルであったが、内容はECRイオン源の話であった。実験装置の詳細について説明があり、その後これまでに行った実験について詳細な説明があった。ECRイオン源は、無電極で比較的密度の高いプラズマが作れる大変良いイオン源であると教科書に書かれているが、大学ではあまり研究されておらず、話を聞く機会がほとんどないので、大変興味深く聞かせていただいた。例えば、放電容器に磁場を印加する磁場発生用のコイルにしても教科書にはコイルの図が描かれているだけであるが、複数あるコイルの間隔を変えることで、磁場分布が変わり、特に放電容器中心部分の磁場が強い方が密度の高いプラズマが生成できるとのことだった。教科書には書かれていないノウハウ的な話で興味深かった。また、プラズマの電子密度を測定するのにラングミュアプローブを使っているとのことであったが、ラングミュアプローブはグロー放電専用と教科書には書かれていて、そういうものだと思い込んでいたが、どうもそうではないようだ。
講演の最後の部分で、博士後期課程を修了した際の就職活動の様子や会社に入ってからの研究の進め方について講師の先生の実体験が語られた。学生にとってはこちらの話の方が興味深かったかもしれない。









演題   医工融合研究による治療支援の最前線
講師   正宗 賢 氏
      (東京女子医科大学先端生命医科学研究所)
日時   平成26年12月11日(木)14時30分〜16時00分
場所   前橋工科大学 1号館 141教室(群馬県前橋市上佐鳥町460番地1)
主催   電気学会東京支部群馬支所

参加者数は132名(内,学生122名,教職員8名,外部2名)であった.
本講演では,治療支援機器を中心に医工融合研究について広く紹介いただいた.工学技術の進歩にともない医学と工学の連携さらには融合が今後加速する.本講演では,はじめにこれまで開発された脳外科用ロボットが紹介された.超音波モータを用いたロボットを用いることでMRI環境における治療支援技術が可能となっていることが示された.次に,同軸レーザ観察内視鏡の開発について胎児治療を例に,その原理や利点について説明いただいた.出生前の胎児の治療が本技術を用いることで可能となるとのことであった.最後のトピックはiPadを用いたNavigationシステムの開発が紹介されていた.医療における拡張現実感を利用したデバイスの開発事例から,さらにはより簡便に利用できるiPadを用いた治療拡張現実感の技術応用が紹介された.まとめとして,医療技術普及のために必要なレギュレトリーサイエンス研究など,最前線での課題や動向についてご講演いただいた.これまでは医工連携という言葉が頻繁に利用されてきたが,これからはさらに進めて医工融合が重要な課題となることがわかった.また医工融合においては,医学・工学の研究者のみならずバイオ,製薬,電機,IT等の幅広い人材とともに研究をする必要があるとのことであった.最先端の研究事例や研究の必要性が明確になり大変有意義な講演会であった.









演題   世界遺産 富岡製糸場と技術革新
講師   今井 幹夫 氏
      (富岡製糸場総合研究センター 所長)
日時   平成26年12月10日(水)12時40分〜14時10分
場所   群馬大学理工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催   電気学会東京支部群馬支所

参加者は56名(内,学生46名,外部5名,教職員5名)であった。
21014年に世界遺産として認められた富岡製糸場について,富岡製糸場総合研究センター 所長の今井幹夫氏により,「世界遺産富岡製糸場と技術革新」と題して講演していただいた。また,講演当日午前8時に国宝としても認められた旨の報告があった。講演では,操業開始当時から説明された。1850年頃,蚕糸類の輸出が品質不良のため,減少しつつあった。そこで政府はヨーロッパ(フランス)から製糸機器を導入することを決め,繭,水,石炭があり地元の合意が得られている富岡を選出した。最初の5年間は,糸のランク1〜6の内,1,2位はなかったが,その後は上位1〜3位の糸を生産することが出来た。その後,経営は国から三井,原,片倉と変わり,昭和62年まで続いた。途中機械化などにより,明治22年17トンの生産が昭和50年頃には373トンと大きく増加することが出来た。以上を通して,富岡製糸場,田島弥平旧宅,高山社跡,荒船風穴を合わせて,富岡製糸場と絹産業遺産群が世界遺産として価値があることを説明された。 日本の近代化だけでなく,絹産業の国際的技術交流および技術革新を伝える世界遺産・国宝富岡製糸場の価値について,詳しく勉強することが出来,大変有意義な講演会であった。









演題   ホンダのEV&HEV開発物語
講師   遠藤 佳宏 氏
      ((株)ケーヒン 先進技術研究部)
日時   平成26年6月27日(金)14時20分〜16時50分
場所   群馬大学理工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催   電気学会東京支部群馬支所

参加者は39名(内,学生32名,外部1名,教職員6名)であった。
自動車の動力源(EV,HEV用)として電動モータが使われ始めて早17年が経過しており,今では自動車に駆動装置として電動モータが使われるのは当たり前になっている。このような時期に,ホンダ初の電動モータを搭載した初代EVと初代HEVの開発に携わった講師の開発物語を講演していただいた。まず,(株)ケーヒンの会社紹介と講師の車載モータ開発経歴の説明があった。次に,EV(HONDA EV Plus)開発物語として,ゼロから始めた開発で「数をこなして勉強しろ」と言われながら,5年間で10モータを試作し,設計検討だけでは得られない現物との対話を通して技術力向上が図れたということを説明された。説明では,バッテリー小屋で蚊との戦い,インバータやモータの破壊を音と光のシンフォニーとして,遠心力によるマグネットの吹き飛びなど,苦労を明るく解説された。続いて,HEV(Insight)開発物語として,初期の電動モータ搭載機では,燃費がガソリン車より下がってしまったが,泣き言を言ってる暇が有ったら燃費を上げろ!と言われ,色々な技術的改良により,先行メーカに遅れる事2年であったが,当時の燃費は世界一を達成した事が説明された。最後に,HEVの効果が燃費対車両重量の逆数の図を用いて分かりやすく説明された。 本田での20年間にわたる開発を通して,開発現場でしか知り得ない裏話を中心に悩み苦しんだエピソードを多少の技術的な考察も織り交ぜて紹介された。質問も学生を中心に5,6件出され,大変有意義な講演会であった。








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