平成16年度講演会


講師   橋本 修 氏(群馬県立ぐんま天文台 専門員)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成17年1月19日(水) 13時〜14時30分
場所   群馬工業高等専門学校大講義室(群馬県前橋市鳥羽町580)


 参加者は約118名,内訳は、電気学会会員5名、会員を除く教職員は13名、その他約 100名は主に3年生〜5年生の学生であった。  最初に、天体観測とは何か、基本に立ち返り、まったくの初心者でもわかる噛み砕 いた解説があった。すなわち、望遠鏡で集められた天体からの電磁波(光)を解析する ことによって、非常に遠くにある天体の種々の物理量を測定することである。このた め、惑星探査など地球から探査機をとばせるような天体は、天文学から切り離される 傾向にあるということであった。観測に使われる精密な装置には、検出器や制御シス テムなどの様々な最新技術が駆使されており、ここでは、ぐんま天文台の150cm望遠 鏡と高分散分光器GAOESを例に、観測装置に用いられる技術的な特徴を紹介された。 ぐんま天文台の環境条件等も考慮しながら、これらの装置の天文学的な有効性につい て議論された。  講師の佐藤修氏は本年4月から群馬工業高等専門学校電子メディア工学科4・5年 生を対象とした新科目「宇宙科学」を担当される予定で、学生の関心は高く、講演後 も熱心に質問する様子が見られ、大変有意義な講演会であった。





講師   Dr. Fatih Anayi(イギリス カーディフ大学)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   12月22日(水)16時00分〜17時00分
場所   群馬大学工学部総合研究棟502教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)


 参加者は87名で,内,学外から澤藤電機(株)2名,教職員5名であった。
 電力用半導体デバイスを高電圧で使用するための直列接続,大電流で使用するための並列接続時に付加する外部回路とその動作や特性について説明があった。並列接続では,ダイオードの場合,抵抗とコンデンサの並列,サイリスタの場合,(抵抗+コンデンサ)と抵抗の並列接続,トランジスタの場合,((抵抗とダイドードの並列)+コンデンサ)と抵抗の並列接続となる。並列接続の場合,各素子に抵抗あるいは相互インダクタンスを接続する。また,イギリス,カーディフ大学の紹介も行なわれた。英語での講演会であったが,内容は基本的であったので学生にもかなり理解されたようであり,有意義な講演会であった。参考のために,英文要旨を以下に示す。
The talk considers various areas of power device application that are often overlooked. Such area include parallel and series device utilisation, overcurrent and overvoltage protection. The power-handling capabilities of power devices are generally limited by device area utilisation, encapsulation and cooling efficiency. Many high-power applications exist where a single device is inadequate and, in order to increase power capability, devices are paralleled to increase current capability or series-connected to increase voltage ratings. Extensive series connection of devices is utilised in HVDC transmission thyristor modules while extensive paralleling of transistors is common in inverter applications. When devices are connected in series for high-voltage operation, both steady-state and transient voltages must be shared equally by each individual series device. If power devices are connected in parallel to obtain higher current capability, the current sharing during both switching and conduction is achieved either by matching appropriate device characteristics or by using external forced sharing techniques.




講師   青木太郎 氏(独立行政法人海洋研究開発機構 海洋技術研究開発プログラム プログラムディレクター)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成16年12月6日(月) 12時40分〜14時10分
場所   群馬大学工学部大講義室(群馬県桐生市天神町1-5-1)


 参加者は85名で,ほとんどが学生であった。
 最初に,海洋研究開発機構が開発した深海巡航探査機「うらしま」の目的の説明があった。それには,地球温暖化の原因である二酸化炭素の移動過程解明,地震予測のための海底調査,国家セキュリティー,海底資源調査などが挙げられる。続いて,開発の歴史が紹介された。平成10年度から開発を始め,海域試験により自律航法技術の確立を計り,これに並行し陸上施設において出力4 kWの閉鎖式燃料電池の開発を行った。平成14年夏,リチウムイオン電池を動力源として132.5km の自律航走試験に成功した。また,燃料電池開発についても各種の問題点を克服し,平成14年に搭載可能なレベルとなり,同年秋から搭載工事を行い,平成15年夏に世界初となる燃料電池による水中航走に成功した。そして平成16年6月には220kmの自律制御による連続航走に成功した。これらの開発における主たる技術である,長い航続距離に適する燃料電池や,自律航行制御装置としてのリングレーザジャイロ,GPS,ホーミングソーナ,などの説明があった。最後に,夏の北極海を横断できる航続距離3千kmの「うらしま2号機」を建造し,北極の氷の下を横断しながら氷厚等の海洋データを収集し,地球温暖化究明に役立てる計画が紹介された。  非常に夢のある話とそこで必要な技術開発について聞くことが出来,大変有意義な講演会であった。





講師   永瀬秀彦 氏(ジェイアール東日本メカトロニクス(株)開発本部 統括リーダ)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成16年11月2日(火)12時40分〜14時10分
場所   群馬大学工学部総合研究棟3階301教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)


 参加者は46名で、学外からはサンデン、ミツバ、山武の計3名であった。
 最初に、ICカードの構造と特徴として、接触式ICカードと非接触式ICカードの特徴について説明があった。その特徴を生かし、接触式ICカードは金融分野で使われ、非接触式ICカードは交通分野で使われており、非接触式ICカードは規格化が進行中であるとのことであった。ジェイアール東日本のICカード(Suica)システムの開発は、1987年から1991年のICカードと読み取り機の開発から始まり、当初切符用自動改札機とICカードを同時に導入するかと言った議論もあったそうであるが、当面切符用自動改札機のみ導入された。Suicaについてはその後10年間に渡り、1次、2次、3次開発及びそれぞれの評価、周辺機器の開発が行われ、2001年11月18日サービスを開始し、講演会の直前10月26日に発行枚数が1000万枚に達したとのことであった。  システムの開発においては、ICカードが自動改札機の通信範囲に一定時間入るようにタッチアンドゴーのキャッチフレーズを考えたり、券売機や自動改札機を配置した総合試験センターでのテスト、埼京線でのモニターテスト等を行い、導入に至ったのであるが、その成果が評価され、2002年度の日本機械学会賞を初め、幾つかの賞を受賞したとのことである。Suica導入による投資効果としては、キップのコストダウン、増収、メンテナンスコストの削減といった効果が投資額を上回っているとのことであった。Suicaは現在、首都圏、仙台、近畿エリアにおいて、JRの運賃、一部のコンビニでの支払い等に利用されているが、今後は私鉄の乗り換えも1枚のカードで行えるよう、システムの拡張が行われるとのことであった。Suicaという名前はなじみ深い物となっているが、開発に携わった永瀬氏から直接話を聞くことができ、大変有意義な講演会であった。




講師   小坂光二 氏(熊本テクノロジー)
主催   電気学会東京支部群馬支所
日時   平成16年6月28日(月) 14時20分〜15時50分
場所   群馬大学工学部総合研究棟301教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)


 参加者は45名で,学外からは三益半導体(株)2名,(株)ミツバ1名の計3名, 教職員5名,学生37 名であった。  
 最初に,半導体製造装置の動向について,2002年の国際半導体技術ロードマッ プによれば,2010年 にはテクノロジーノード45nm(ナノメートル)の実現が予想されており,次世代 の転写用光源として は電子ビームが期待されている事などが分かりやすく説明された。次に,電子ビ ームに適するステー ジ駆動用アクチュエータとして開発した,非共振型アクチュエータ(製品名SPIDER )について説明が あった。圧電素子とは,から始まり,超精密位置決め技術の課題とそれをどのよ うに克服してきたか について,実用化という点から主に耐久性について説明された。更に,他分野へ の応用として,バイ オ関連への適用例の説明があった。最後に,産学連携と研究開発について,現場 からの提言がなされ た。  今後,日本が世界をリードしていくであろう分野の最先端の話を聞くことが出 来,大変有意義な講 演会であった。




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