平成17年度講演会
演題 大電流エネルギー工学の新展開―環境問題解決への寄与―
講師 松 村 年 郎 氏(名古屋大学大学院工学研究科電子情報システム専攻 教授)
日時 平成18年2月1日(水)14時30分〜16時00分
場所 群馬工業高等専門学校 大講義室(群馬県前橋市鳥羽町580)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は約109名,内訳は、電気学会会員4名、会員を除く教職員は11名、その他約 94名は主に3年生〜5年生の学生であった。先ず,電力系統の現状についてわかり易く解説された。その中で,ガス遮断器は消弧ガスとしてSF6を使用しているが,地球温暖化防止京都会議で規制対象ガスとなったために, SF6の厳密な管理・回収技術を確立させるとともに,SF6に替わる消弧ガスの探索が行われ,CO2ガス遮断器,SF6混合ガス遮断器などの研究・開発課題が示された。また,大電流エネルギー応用技術として,アーク炉,電気溶融炉,プラズマ溶融炉,高周波溶融炉を用いた廃棄物処理施設が開発・実用化されているということであった。これら設備では,ゴミ焼却灰の溶融,ダイオキシン汚染土壌の無害化,注射針等の医療ごみの処理,放射性廃棄物の高減容処理などがされるという解説があった。学生に電力系統の基礎的な事項から,大電流技術と環境問題との関連について現状と今後の動向まで聞く事ができ,有意義な講演会であった。
演題 超高速軟X線レーザーの開発とその応用
講師 緑川 克美 氏(理研 レーザー物理工学研究室 主任研究員)
日時 平成17年11月24日(木) 14時20分〜15時50分
場所 群馬大学工学部総合研究棟5階501教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は39名(電気学会会員は日本シィエムアイ(株)1名,学生33名,教職員5名)であった。
支所長である本学石川教授の司会のもと、理研 レーザー物理工学研究室 主任研究員緑川克美氏が「超高速軟X線レーザーの開発とその応用」と題して講演した。
まず理研の歴史と現在の研究拠点について説明した後、「光で何が見えるか?」との観点から顕微鏡、望遠鏡、X線、レーザーと新しい技術が開発され、最近の注目事項としてフェムト秒レーザー、テラヘルツ光、近接場光を挙げられた。また、波長によりどのような物が観察できるかを説明された。その後、超短パルス高強度レーザー光の発生法としてチャープパルス増幅について説明された。これは短パルスのレーザー光を回折格子を用いたパルスストレッチャーでパルス伸長し、光を増幅した後、パルスコンプレッサーでパルス幅を短くすることで高強度のレーザー光を得る技術である。この技術を用いて発生したフェムト秒のテラワットレーザーを希ガス等に集光すると、高次高調波が発生し、例えばレーザー光と同じ性質を持ったコヒーレントな軟X線が得られる。この軟X線は水の窓領域のX線であれば細胞を生きたまま観察可能な軟X線顕微鏡の光源や次世代の半導体リソグラフ技術として現在技術開発が行われている極端紫外光の光源として応用が可能である。また、この高次高調波によりアト秒に至る極超短パルスを発生でき、実際に理研で使用されている装置の紹介とアト秒パルスの計測について説明があった。最後に、将来展望として、テラヘルツ光や近接場光について語られ、講演を終えられた。
この分野の第一人者である緑川氏から最先端の研究について伺うことができ、また講演後活発な質疑もあり、大変有意義な講演会であった。
演題 光を利用した大容量ストレージの将来技術の紹介
講師 新谷 俊通 氏((株)日立製作所 中央研究所
ストレージ・テクノロジー研究センタ 光応用記録研究部 主任研究員)
日時 平成17年10月27日(木)16時〜17時30分
場所 群馬大学工学部3号館5階509教室
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は58名(教職員5名,学生53名)であった。
現在,オーディオ製品の小型化やHDD/DVDレコーダの普及,及び高精細TV画像の出現に伴い,大容量ストレージに対する要請が高まっており,磁気ディスク及び光ディスクの分野で,データの大容量化,高密度化が進められている。本講演では,まず光ディスクであるCD,DVD,Blu-ray Disc,HD DVDの記憶容量の紹介があり,高密度化に関係して多層化,近接場,超解像,ホログラムについて概説された。続いて,現在の光ディスクの10〜50倍の容量を狙う3次元ピット選択法と電圧層選択型光ディスク技術について,その原理や方法について紹介され,50GB×20層で1TBが可能であるという説明があった。続いて,光ディスクのロードマップを用いて2012年の1.2Tb/in2の方式として熱アシスト磁気記憶について,その原理などが紹介された。
ますます高密度化するストレージの将来技術について最新に話を聞くことができ,また磁気記憶の話の途中で,アニメーションを使った垂直磁気記憶の話は面白く,有意義な講演会であった。
演題 高速電力線通信(PLC)の動向
講師 小川 理 氏(東京電力(株)電子通信部 通信インフラ技術グループマネージャー)
日時 平成17年7月12日(火)12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部3号館5階509教室
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は91名で,内,東京電力8名,ミツバ1名,サンデン1名,群馬大学教職員8名であった。
まず,高速電力線通信について概説された。この通信は,電灯線に2〜30MHzの高周波を重畳させてデータを伝送する方式であり,利点として,電気コンセントにつなぐだけで通信が可能,既設の電気配線を利用でき通信線の新規敷設が不要が挙げられる。課題は,電灯線とアース間での電位の不平衡により,漏えい電波が発生することである。漏えい電界の低減技術として,1)信号結合回路の高感度化により,低いモデム出力でも従来と同等の通信性能を維持できるようになった。2)フェライトコアやフェライトリングを用いたコモンモードフィルタの挿入やモデム平衡回路の改善により,コモンモード電流を低減できた。3)直交周波数変調(OFDM)により,特定帯域にノッチ設定が可能になり,さらにSN比の悪い帯域はビット割り当てを小さくするなど柔軟に対応可能になった。これらの技術開発により,集合住宅構内アクセスモデルを対象として,規制緩和に向けた研究会が開催されている事が説明された。
実用化の期待が膨らんでいる高速電力線通信技術について最新の話を聞く事が出来,有意義な講演会であった。
演題 パワーインダクタをコア技術にした新エネルギー電力変換システム開発への取組み
講師 竜野 三千生 氏(東京精電株式会社 代表取締役社長)
日時 平成17年6月6日(月)12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部5号館4階541教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)
主催 電気学会群馬支所
後援 群馬大学アナログ集積回路研究会
参加者は81名で,内,学外から石田製作所3名,日本シイエムケイ1名,山田製作所1名,ミツバ1名,新日本無線1名,サンデン1名,他2名,群馬大学内の会員4名であった。
現在の最新技術であるハイブリッド車・燃料電池車や分散型電源装置には,コンバータ回路やインバータ回路が組込まれている。今回の講演会は,そこで使われるコア技術の1つであるインダクタに関するものである。開発された丸線三層重ね巻き,平角線縦一層巻き,単層開脚巻きインダクタなどの比較を初めとして豊富な資料や製品の現物を用いて説明された。更に,パワーインダクタを用いた製品である家庭用1kW燃料電池系統連系インバータや,燃料電池式1kWポータブル交流発電装置などについても説明された。
また,後輩である学生に対して,ピーター・F・ドラッカーの「断絶の時代」の文章を引用し,今日やろう,自ら学ぼうなどの激励があった。竜野三千生氏は本学電気電子工学科の卒業生(1972年)であり,活躍されている先輩の話を聞く事が出来,大変有意義であった。
講師 Professor Rahman(Memorial University of Newfoundland, CANADA)
主催 電気学会東京支部群馬支所
日時 平成17年5月12日(木)12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部総合研究棟502教室(群馬県桐生市天神町 1-5-1)
参加者は65名で,内,学外から(株)ミツバ1名,学内学会員4名であった。 最近,トヨタ自動車を始めとする日本の自動車メーカが埋込磁石型(IPM)同期電動機を用いたハイブリッド自動車の開発により大きく売上を伸ばしている。講演では,プリウス2004やSUV2005に使用されているIPMモータについて概説され,更に実験機である自己始動型IPMモータを時間きざみ有限要素法で解析した結果等を詳しく説明された。講演は英語で行なわれたが,ゆっくり丁寧に説明されたので多くの学生が理解できたと思われる。
Rahman教授は3月末から2ヶ月間東京理科大学に滞在していたので,その機会を利用し今回の講演会が実現した。1988年からIEEEのフェローになり,IEEEの3つの部門から功績賞などを受けられた優れた研究者の講演を聴くことが出来,また,英語での講演に慣れるという意味でも有意義な講演会であった。
参考のために,英文要旨を以下に示す。
In recent years, high efficiency electric motors are demanded to meet
the challenges of energy hungry world with limited fuel sources. IPM (Interior
Permanent Magnet) motors have been increasingly developed and widely used
to meet the efficiency and performance requirements. It is because; an
IPM is a highly efficient synchronous motor with built-in advantageous
features. This is due to advances in high energy permanent magnets, smart
inverters and intelligent controllers. Contents will include an outline
of a modern IPM motor in electronic world. On-line and soft starting of
an IPM motor will be provided. Highlights of IPM motors application in
Japanese air conditioners and hybrid electric vehicles will be presented,
which are two examples of ac motor drives in domestic heat pumps and passenger
automobiles for the competitive market place.