平成23年度講演会
演題 電気で探る脳のはたらき
講師 勝山成美氏(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 認知神経生物学分野)
日時 平成23年11月17日(木) 14時30分〜16時00分
場所 前橋工科大学 1号館 141教室(群馬県前橋市上佐鳥町460番地1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
協賛 NPO Wireless Brain Network
前橋工科大学工学部システム生体工学科
参加者は125人(内、学生117人、教職員8人)であった。近年、脳科学は飛躍的な進歩を遂げつつある。脳は人体の器官であるから、その機能を調べるためには、生理学、解剖学、それに心理学的な方法が中心になると思われがちだが、脳を構成する神経細胞の情報処理は、電気信号を介して行なわれている。したがって伝統的な脳波実験や電気生理学実験をはじめ、新しい技術として注目されている機能的MRI
(Magnetic resonance imaging)や脳磁図、経頭蓋磁気刺激法など、脳のはたらきを調べる実験手法の多くは、電磁気学や電気工学に多くを負っている。演者が携わってきた神経活動の記録実験と機能的MRI実験の例を紹介するとともに、電気を通して見た脳のはたらきについての講演であった。
講演の順序は、「神経細胞の電気的活動」、「神経科学の実験的手法」、「3Dを見る脳のしくみ」であった。「神経細胞の電気的活動」では、Luigi Aloisio Galvani (1737 ? 1798)とAlessandro Volta(1745 ? 1727)の電気生理現象の発見、表情筋の電気刺激によってみかけの「笑い」、「驚き」、「恐れ」などの「表情」がつくられた研究が紹介された。また、Hermann von Helmholtz (1821 ? 1894) による神経細胞の興奮伝導速度の計測、活動電位の伝播の仕組み、そしてニューロン活動の定量化などの紹介があった。「神経科学の実験的手法」では、各種手法と空間分解能・時間分解能との関係が紹介された。「3Dを見る脳のしくみ」では、網膜の構造と機能、動き・形態と色・さまざまな奥行きに関する脳における視覚情報処理の研究から、奥行き知覚はバーチャルであり、それにはIPS(頭頂連合野)が関わっている、という成果が報告された。第一線の研究者の講演は、大変刺激的であった。
演題 Sub-nTに至る高感度フラックスゲートセンサーとその応用
講師 山田興治氏(埼玉大学客員教授,JST Researcher)
日時 平成23年11月 7日(月) 12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部総合研究棟502教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は31名(内,学生26名,教職員5名)であった。
磁気検出の方法には多くの方法がある。古くは大地にある自然に着磁した鉄鋼石を糸に吊るして地磁気(最大0.5ガウス)のN-Sを検出したものである。現代科学的には非常に精度が上がり、量子素子を用いて地磁気の100万分の1程度まで検出可能とされる。講演では,まず微小磁界とその応用例として,脳磁界,心臓磁界,MRI,半導体や非破壊検査などが解説された。続いて磁束を磁性体に導き途中にgate(門)を設けOpen-closeを繰り返すことにより直流磁界を交流磁界に変換し,コイルを巻いて磁界強度を検出するフラックスゲートセンサの原理について易しく丁寧に解説された。その構造として,磁路を2並列設けゲートは直列にする方式,外側の逆方向のゲートを設けその中央の磁束を0とする方式などが解説された。実際に開発したフラックスゲートセンサとそれを用いたステンレス鋼板の検出や地磁気の観測結果等が紹介された。最後に,液体窒素を用いなくても同党の感度を持つフラックスゲートセンサを現在作成中であることが述べられた。
本講演では手軽に10万分の1ガウス程度の検出可能性を示す最先端のフラックスゲートセンサーの原理について分り易い講演を聞くことができ,大変有意義であった。
演題 モータ技術の動向と新構造モータ
講師 森田 郁朗 氏
(徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部
エネルギーシステム部門エネルギー変換工学講座 教授)
日時 平成23年11月 4日(金)16時〜17時30分
場所 群馬大学工学部総合研究棟502教室(群馬県桐生市天神町1-5-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は80名(内,学生74名,外部4名,教職員2名)であった。 モータは,携帯電話,エアコンなどの家電製品,ロボット,ハイブリッド車や電気自動車,製紙・製鉄所など幅広い分野で使用され,その製品の性能を決定する構成要素である。毎年地球人口とほぼ同数が生産され,電力会社の発生電力の約50%以上を消費し,車1台には40〜120個も使用されている。講演では,まず,なぜモータなのか?として,エネルギー密度の点から解説され,永久磁石の発展を通してモータの様々な用途について述べられた。次に,新構造モータとして,構造のトポロジー,巻線方法や磁石配置方法,コギングトルク低減技術,分数スロットと整数スロットの違い等が解説された。続いて,新構造モータとして,日産のスーパーモータ,メモリーモータ,Written
poleモータ,Dual Rotorモータ,HE・VEV用巻線切替方式,その他名工大やウイスコンシン大のモータ,誘導同期モータ等が解説された。
140年余りの歴史を持つが,今でも先端技術であるモータ技術の動向やEV用などに新しく開発された新構造のモータについて最先端の技術を聞くことができ,大変有意義な講演会であった。
演題 Model Based Design of Inverter Power Supply
(インバータ電源のためのモデルベース設計について)
講師 Dr. Mona Abo El-Dahb (モナ アボ エル ダーブ博士)
Research Assistant, Electrical Engineering Dept.,
Faculty of Engineering, El-Minia University, Egypt
日時 平成23年10月24日(月) 12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部総合研究棟502教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
共催 群馬大学アナログ研究会
石川支所長の挨拶に引き続き,講演内容の紹介が簡単に行なわれた。本講演が英語で行なわれるため,学生の理解を助けるために7枚程度のスライドを用いて講演内容の予備知識として日本語で行なわれた。その後,エジプトEl-Minia大学のモナ アボ エル ダーブ博士が「インバータ電源のためのモデルベース設計について」と題して講演を行った。ダーブ博士は今年9月に白石准教授のもとで群馬大学から博士号を取得した関係から,この講演会が企画された。インバータは直流から交流電源を発生する装置であるが,最近のマイクロプロセッサの進歩により,デジタル制御が採用され,工業製品特に電子機器製品に含まれる組み込みシステムになりつつある。そのような組み込みシステム開発のプロセスを改善するための一つの手法として,モデルベース開発がある。そこでは,モデルによる仕様の表現・定義,モデルのシミュレーションによる設計の詳細化,妥当性検証,モデルからの自動コード生成による実装,テスト・検証におけるモデルの再利用等が行われる。講演では,インバータ制御系を対象としてその設計やシミュレーションが具体的に解説された。
最後に,学生にとっては講演が英語で行なわれたため内容の理解が多少難しかったが,逆に専門英語の講演を聞くことができたという意味でも有意義な講演会であった。
演題 工学と医学の狭間で−医療機器開発50年−
講師 久保田 博南 氏
(ケイ・アンド・ケイ ジャパン(株)代表取締役)
日時 平成23年7月7日(木) 12時40分〜14時10分
場所 群馬大学工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
共催 群馬大学アナログ研究会
参加者は96名(内,学生86,外部4名,教職員6名)であった。
群馬大学山越教授の挨拶の後,ケイ・アンド・ケイ ジャパン(株)代表取締役の久保田 博南氏が「工学と医学の狭間で−医療機器開発50年−」と題して講演を行った。
工学の対象が物体であるのに対し,医学のそれは人体である。医用工学(ME, Medical Engineering)はこの2つの異分野の境界領域にあり,医療機器開発の基盤ともなっている。講演では,1903年オランダの生理学者アイントーフェンが心臓からの微弱な電位を発見し最初の心電計を創り上げたことから始まり,50年にわたる医療機器の展開について述べられた。例えば,1974年に日本で発明されたパルスオキシメトリーは,長期間の試行錯誤を経て生体情報モニタの主役の場に入ってきていること,そして人工呼吸器と組み合わせた在宅医療向けの応用製品SAS(Sleep Apnea Syndrome)患者用治療機器群など総合医療へ向けた取り組みもあることなどが説明された。更に,将来の医療機器の一つとして,心臓ペースメーカの無接点充電装置などが説明された。
最後に,群馬大学電気工学科昭和38年卒の大先輩として,学生に対して,できないと思うとできない,前向きな何とかしようという気持ちが大切である,というアドバイスも頂くことができ,大変有意義な講演会で会った。
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