平成28年度講演会
演題 重工業界における高速回転機械の研究開発と将来動向
講師 桑田 厳 氏
(株式会社IHI 技術開発本部 基盤技術研究所 機械要素研究部 機械力学グループ 課長)
日時 平成29年1月24日(火)15時00分〜16時30分
場所 群馬大学 理工学部 総研301室(群馬県桐生市天神町1-5-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は23名(内,学生20名,教職員3名)であった。
本講演では,重工業の位置づけからターボチャージャーの構成要素,各構成要素が抱える課題,そして非接触支持やターボの電動化といったトレンドまで,広範囲にわたって丁寧にご説明いただいた。特に,日本初の乗用車,ジェットエンジン,エレベータがIHIにより造られたことや,自動車用ターボが軽量化やダウンサイジングを主目的に導入されていること,ガス軸受や磁気軸受による非接触な超高速回転支持が応用されつつあること,そして電動化ターボにより電気飛行機の実現可能性があることなどが興味深かった。また,重工業分野での電気電子技術の貢献が航空分野での具体的な事例により紹介され,今後の更なる発展を期待するとともに,大変有意義な講演会であった。
演題 人間特性の解明と福祉工学への応用
講師 水戸 和幸 氏
(電気通信大学 情報理工学研究科 情報学専攻 准教授)
日時 平成28年12月1日(木)14時30分〜16時00分
場所 前橋工科大学 1号館 141教室(群馬県前橋市上佐鳥町460番地1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
協賛 NPO Wireless Brain Network
前橋工科大学工学部システム生体工学科
参加者数は132名(内,学生123名,教職員7名,外部2名)であった.
本講演は,(1) 筋電図・筋音図を用いた加齢による運動機能の定量的評価法および(2) 浮き出し文字,図形による視覚障害者の触知案内図を中心とした内容であった.
筋電図や筋音図を用いることにより筋量を定量的に評価できること,また筋繊維電動速度から運動ユニットの質を評価できることがデータによって示されていた.触知案内図に関する研究では,視覚障害者に対して認知しやすい浮き出し文字,図形について考案されていた.ただ認知率を計測するのみではなく,触知する際の指の軌跡を捉え,その中から作成された文字・図形と正答率・認知時間を考察するといった内容であった.いずれの講演内容も実用化されれば社会へ普及する内容であり,福祉工学の発展に寄与すると考えられる.
演題 内部モデル原理は偉大だ!と感じるメカトロへの応用例
講師 涌井 伸二 氏
(東京農工大学大学院 工学研究院 先端電気電子部門 教授)
日時 平成28年11月22日(火)14時30分〜16時00分
場所 群馬大学 理工学部 総合研究棟301教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は32名(内,学生27名,教職員5名)であった.
本講演では,制御系の機能を表現するための内部モデル原理について,その偉大さを磁気軸受を用いたターボ分子ポンプ,空気ばねを用いた除振装置など,各種の適用例を交えて詳細にご説明いただいた.0型の制御系に現場調整により力業で適合させたテーブル補償を加え1型の特性を出していたとか,会社でも部外者からの様々な外乱に対応するためには,同じ特性を持った人材が必要である,など大変分かりやすく,また共感する部分も多く,有意義な講演会であった.
演題 高エネルギーイオンマイクロビームの計測・制御技術とその応用
講師 神谷 富裕 氏
(国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構・高崎量子応用研究所(QST高崎)上席研究員)
日時 平成28年11月7日(月)10時20分〜11時50分
場所 群馬大学理工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者数は78名(内,学生73名,教職員5名)であった.
本講演では,イオン照射研究施設TIARAにおいて開発した高エネルギーイオンビームの形成・制御・計測技術と,それを用いた様々な応用研究についてご紹介いただいた.世界初となる1um空間分解能を有する大気マイクロPIXE分析システム装置を製作し,大気中のエアゾールの分析への応用や,歯質へのフッ素浸透効果の分析,リチウムイオン電池の電極分布の分析などの応用事例を交え,専門外の方にも理解できるよう平易にご紹介いただいた.シングルイオンの照射により,だるまパターンを描画したのには驚かされた.今後は,国内外での共同研究を進展させ,分析の定量化や3次元イメージング技術の高度化により「使いこなすための計測技術」の開発に注力し,開発した技術の普及を目指すということであった.
演題 レーザーが変える外観検査と加工技術
講師 菊地 弘 氏
(オプトウエア(株) 社長)
日時 平成28年7月6日(水)10時20分〜11時50分
場所 群馬大学理工学部3号館5階509教室(群馬県桐生市天神町1−5−1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加者は75名(内,学生68名,教職員7名)であった。
従来、製品の外観検査は目視やカメラを使用したシステムによって行われてきたが、これをレーザーを用いたシステムに置き換えることによって、問題となる汚れや傷の数値化が行えるなど、より多くの情報を取り出せるとともに、より客観的な判断ができるとのことであった。人間は優秀で、今問題としていない問題、例えば傷の検査をしている時に、製品の形がおかしいとかが製品にあった場合、これをはじくことができる反面、不良品を商品として出荷してはいけないという気持ちが働き、不良品の発生率が高くなる問題があるとのことであった。
菊池氏の会社では1D、2D、2.5D、3Dの測定技術を持ち、自動検査用の装置の開発を行ってきた。基本はコピー器と同じであり、光源から発射したレーザー光をポリゴンスキャンと呼ばれる回転体にミラーが付いた物で反射し、一方向に走査、その反射光を検出器で読み取り、数値データ化するとのことであった。この手法を用いた自動検査等の開発事例が紹介された。
また、レーザー加工の例として、携帯電話の液晶製作の例が簡単に紹介された。レーザー加工というと炭酸ガスレーザーを用いた金属の切断を思い描くが、ファイバーレーザーを用い、半導体などの回路パターンを直接描画する技術が開発されているとのことであった。
菊池氏の会社では、主に企業からの依頼で技術開発をしているため、自社の製品が販売されていることはほとんどないが、講演内容は学生だけでなく教員にとっても大変興味深く、有意義な講演会であった。
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