2025年度講演会
演題 磁気を利用した生体の非侵襲イメージング
講師 伏見 幹史 氏(東京大学大学院情報理工学系研究科)
日時 2025年12月5日(金)14:40〜16:00
場所 前橋工科大学工学部131講義室(群馬県前橋市上佐鳥町460-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
共催 前橋工科大学工学部生命工学領域
協賛 特定非営利活動法人 Wireless Brain Network研究会
参加人数 55人(学生:50人、教職員:3人、一般:2人)
高齢化が進む現代において、いかに健康寿命を延ばすかが喫緊の社会課題であり、生体のイメージング技術による病気の早期診断が重要である。
対象が人である以上、メスで切り開くことなく内部を可視化することが望まれる。
磁気は音や光と異なり高い生体透過性を持ちながらも、エックス線やガンマ線と異なり被曝の心配もなく、生体のイメージングにとって魅力的な媒体である。
計測において、人体のように対象内部に直接アプローチできないとき、周囲に広がる場の測定を介して対象の情報を復元することになる。
パターン計測、間接計測などと呼ばれる工学の基礎的課題であるとともに、観測結果から因果律を遡ってその原因を推定することから、数理的には逆問題とも呼ばれる。
これは順問題(原因から結果を予測するもの)よりはるかに難しい。逆問題の応用は、非侵襲計測、非破壊検査、物理探査、埋没者探査などがある。
講演ではまず、生体の非侵襲イメージングに共通する逆問題研究の考え方が紹介された。
次に、磁気測定に基づく生体の非侵襲イメージング技術について、脳磁図(MEG)と磁気共鳴画像(MRI)を中心に解説があった。
演題 Beyond 5G/6Gに向けた高精度時刻同期 ― 技術動向とNICTの取り組み ―
講師 矢野 雄一郎 氏(NICT 主任研究員)
日時 2025年9月5日(金)14:00〜15:30
場所 群馬大学 桐生キャンパス プロジェクト棟 P204(群馬県桐生市天神町1-5-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加人数 18名(教職員、ポスドク、学外者3名を含む)
本講演では、NICT主任研究員を務める矢野雄一郎氏が「Beyond 5G/6Gに向けた高精度時刻同期 ― 技術動向とNICTの取り組み ―」と題して講演を行った。
冒頭では、クイズや動画を交え、参加者の関心を引きつけながら日本の時系生成や NICTの役割が紹介された。
矢野氏は「小さな原子時計で大きく世界を変えたい」という信念のもと、時空間同期技術の研究を進めていることを述べ、時空間同期の重要性を強調した。
特に、測位・航法・計時を提供するシステム、PNT(Positioning Navigation Timing)が世界の重要インフラ55項目のうち、44項目にとって不可欠であることが示された。
講演の中では、Beyond 5G/6G の実現に向けて、「原子時計の小型化」、「無線通信による高精度時刻同期」、「ロバスト性を高める分散型時刻同期」の3つを中心とした具体的な研究例が丁寧に解説された。
近い将来には屋内でも数十センチ単位で自由に位置情報が得られ、いずれは月や火星でもPNTが利用できるなどといった好奇心を掻き立てる興味深い話もあった。
講演後の質疑応答では、無線通信による三角測量でどの程度の距離を測ることができるかなど、より細部への議論がなされ、大変有意義な講演会であった。
演題 制御工学のこころ
講師 足立 修一 先生(慶應義塾大学名誉教授)
日時 2025年5月15日(木)10:20〜11:50
場所 群馬大学 桐生キャンパス 総研棟 5階 501室(群馬県桐生市天神町1-5-1)
主催 電気学会東京支部群馬支所
参加人数 56名(教職員、ポスドク、学外者8名を含む)
本講演では、制御工学分野の第一人者である足立修一氏が「制御工学のこころ」と題して講演を行った。
冒頭では、「制御工学は一般に人気のない科目」とされる理由について、数式の複雑さや理論の難解さが一因であると説明された。一方で、制御の原理や考え方を理解することにより、その重要性や面白さが明確になることが示された。
講演の中では、ブロック線図の発明が制御理論におけるパラダイムシフトであったこと、内部モデル原理、スモールゲイン定理、縮小再生産と安定性の関係など、制御理論の要点が丁寧に解説された。また、途中には具体的な計算例も交えながら、理論と実践の結びつきが明快に示された。
講演後には活発な質疑応答が行われ、制御工学の本質に迫る問いも展開された。参加者からは「制御の見方が変わった」、「基本の大切さを再認識した」との声も聞かれ、大変有意義な講演会であった。
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